月経周期、月経周期、経血などに関して通常とは異なる事や月経がなぜか止まってしまったり、色々な原因で病症が現れる事を中国の婦人科では「月経疾病」と言われています。これらは月経の失調、子宮の内部がただれて出血している(崩漏:ほうろう)、更年期による月経停止(閉経:へいけい)など様々な症状を有しています。
前回は月経周期が短縮してしまう月経先期について掲載をさせていただきましたが、今回は「月経後期」について掲載をしたいと思います。月経失調などに関しましては前回の月経先期に記載しておりますのでそちらをご覧いただければと思います。
月経後期(月経の周期が長い)
主に日本では通常周期を28日前後と考え、周期が39日以上の方を月経後期といいますが、中国では通常よりも35日以上の方で周期が継続して3期(3ヶ月)継続している方を月経後期という場合が多いです。
月経後期には特にエネルギー源でもある血の不足(血虚)、腎の衰え(腎虚)、寒さなどによって血流が悪くなる(血瘀)の症状(血寒)、気分がふさぎ込んでしまう(気鬱)、痰による阻害などが挙げられますが、冷やす力がなく体内が熱い状態(陰火内灼)、血熱によって水が失われる状態(血熱水亐)なども多少はあります。
月経後期の主な改善策として…
経血の量・色・質によって状況は変わりますが、一般的に経血の色は暗め、サラサラで薄く、量が少ない場合は虚(エネルギーの元などが不足している)が影響している場合があります。また、腹痛が少しある場合で温めると良くなる場合は寒、触るのを拒んだり痛い場合には瘀(滞り)が影響している場合があります。経血が淡い・白みが多い場合には痰湿が影響をしている場合があります。
一般的に養血調経(血を作り出し、月経を整える)をして改善する漢方薬がおすすめです。
血虚証(けっきょしょう)
何年か前になりますが、中国のテレビで都市部で生活をされている女性を調査した際に血虚が多いと集計データがあると報道された事がありますが、ストレスを受けやすい社会でもありますのでエネルギー源となる血の不足(血虚)は起きやすいのではないかと思います。
主な症状としてが以下の症状が特徴的です。
- 経血量が少ない
- 経血の色は淡い、質は薄い
- お腹に少し疼痛がある
- 顔色が黄~白い
- 皮膚が荒れ気味でめまいや疲れが出る
- 心臓がドキドキしている感じで眠れない
- 唇や舌に栄養がない(唇は枯渇している感じ、舌は枯れているように見える)
消化吸収を行い、エネルギー源の気・血などを作り出していく脾が影響を受けてしまい、消耗してしまう事で本来冷やす為に必要な血(陰血)が失われてしまう(耗傷陰血・菅血亐虚)などが原因で周期が長くなる原因となっています。治法としては補血・益気・調経を中心におすすめです。
◎人参養栄湯(にんじんようえいとう)
人参養栄湯はエネルギーの元でもある気・血の双方を補い(気血双補)、消化吸収をしてエネルギーを作り出していく臓器(脾)に気を与える(脾気を与える)漢方薬です。
◎加味帰脾湯(かみきひとう)
加味帰脾湯は人参養栄湯とともに補血を行う事で気を補う(益气补血)や消化吸収をしてエネルギー源を作り出す臓器(脾)を健康にして落ち着きなどを与える(健脾养心)漢方薬です。
※場合によっては温経湯、療方調血などの温経散寒・活血行瘀に効果がある漢方薬とも併用します。
腎虚証(じんきょしょう)
主に先天の精と呼ばれる生まれつき(先天)のエネルギーの源(精)が不足している(先天不足)、体質的に弱い(禀赋素弱)などといった部分が特徴的です。特に腎のエネルギーの元(気)が不足して温める力(腎陽)が不足する事やエネルギーを作り出す脾の代謝不足(気化不足)、血液が補えていない(菅血不充)などの原因があります。
主な症状としてが以下の症状が特徴的です。
- 経血量が少ない
- 経血の色は薄くて黒~暗い色
- 腰痛や夜間尿、耳鳴りがある
- 舌は淡い色で膩苔は薄い白みがある
治法としては補腎・養血・調経を中心におすすめです。
◎牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)
八味地黄丸に牛膝と車前子が加わっている漢方薬です。尿が出にくい場合や浮腫(むくみ)、手足の冷えなどがあまり無い方は八味地黄丸でも腎を温めて補う(温补肾阳)、気の流れをスムーズにして水を流す(行气化水)などの効果があります。
場合によっては腎にエネルギーの気を補う(補腎気)やエネルギー源の精・血を養う(養精血)を目的として六味丸エキス顆粒「クラシエ」(六味地黄丸)などを一緒に使用する場合もあります。
◎鹿茸大補湯(ろくじょうだいほとう)
鹿茸大補湯は特に腎のエネルギー源でもある精(後天の精)・気を補う(大补精气)や血を補う漢方薬として用いられます。また、腎を温める(補腎温陽)、消化吸収してエネルギー源を作り出す脾を補って元気にする(健脾益気)、精(後天の精)を補って腎を元気にする(補腎益精)の作用もあります。
血寒証
血寒証(けつかんしょう)は血が外からの寒さ(寒邪)などによって滞ってしまって血液の循環が悪くなる状態(血瘀)が起きやすい事を言います。主に冷え性などの冷えなどが根本にある、お腹が痛いが温めると改善したり、寒さを比較的感じやすい方におすすめです。
主な症状としてが以下の症状が特徴的です。
- 経血の量は少ない
- 経血の色は暗めで質は塊などがある
- お腹に疼痛があって温めると軽減される
- 顔色は青白で脚が冷たかったり、寒さを感じる、
- 舌は正常または暗め、膩苔は薄い白みがある
治法としては温経散寒・活血行瘀を中心におすすめです。
◎温経湯(うんけいとう)
温めて寒さを散らす(温経散寒)や血の汚れなどを改善して流れをスムーズにして血液の滞り(瘀血)を改善する(活血行瘀)漢方薬です。また、胃に対して気を補ってエネルギー源を作り出す力の元を更生させますので温経散寒、不足を補って月経を調整する漢方薬です。
◎療方調血(りょうほうちょうけつ)
血の流れをスムーズにして血の汚れなどを改善して流れをスムーズにして血液の滞り(瘀血)を改善する(活血行瘀)や血の滞りによって起きているしこりを改善する(消癥)漢方薬です。温経湯に比べて冷えを改善する部分がありませんので冷えがある場合には温経散寒もある温経湯をおすすめします。
気鬱証(きうつしょう)
気鬱証(きうつしょう)はエネルギー源でもある気がふさぎ込んでしまい、流れに滞りが出てしまう事で起こる状態です。気鬱になってしまうと小声になってしまったり、何でもないのにもかかわらず様々な部分でマイナス思考になったり、やる気や集中力なども低下してしまうなどの状況になる場合も多いです。
主な症状としてが以下の症状が特徴的です。
- 経血量は少ない
- 経血の色は正常もしくは黒~黒、質は近い紅の塊がある
- 精神的な抑うつがある
- お腹が張って痛む
- 舌または膩苔は薄い黄色
治法としては行気开郁・佐以活血を中心におすすめです。
◎柴胡疎肝湯(さいこそかんとう)
ストレスなどによって生じやすい気の滞りや影響を受けやすい肝の気や血の停滞による鬱状態を改善して月経を調整する漢方薬です。主に胸や脇、腹が痛む方や頭痛や背筋がこわばる方にもおすすめです。
痰阻証
痰阻証は主に体中にある水が滞ってしまって身体の熱などによって粘り気のある痰や湿へを変化してしまう事でおこる状態です。消化吸収をしたりエネルギー源を作り出したり、肺へ送る運化作用を担っている脾や空気の入れ替えを行ったり、身体にある水の流れを調整する働きを担っている肺にエネルギー源の気が不足している状態(脾肺気虚)が起きやすく、月経を遅らせてしまう原因となっている事も多くあります。
主な症状としてが以下の症状が特徴的です。
- 経血色は主に淡い色をしている
- 経血の色は白みが多く、質は粘り気がある
- 胸に詰まりを感じて食欲が不振になる状態(胸悶納差)がある
- 舌の苔がしっかりあるといった部分が特徴的です。
治法としては健脾燥痰調経を中心におすすめです。
◎二陳湯(にちんとう)
主に消化吸収やエネルギーを作り出す元となっている脾の機能を改善することによって身体の中にある湿を取り除く事で痰が消えていく状態(燥湿化痰)や気を巡らせて脾と胃を調整する状態(理气和中)にする漢方薬です。療方調血(りょうほうちょうけつ)や温経湯(うんけいとう)などの月経を整える(調経)作用のある漢方薬と一緒に使用しても良い場合もあるかと思います。
月経失調に関する情報ページ
今回は主に月経不定期(月経周期が不定期になってしまっている状態)に起きやすい症状などを記載させていただきました。月経失調に関する内容については以下にも記載を行っておりますのでぜひ御覧ください。
- 月経先期(周期が早くなっている状態)
- 月経後期(周期が遅くなっている状態)
- 月経不定期(周期が不定期になってしまっている状態)
- 月経過多(月経の量が多くなっている状態)
- 月経過少(月経の量が少なくなっている状態)
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