ズキズキする、チクチクする……。繰り返す頭痛、つらいですよね。頭が痛むと何も手につかなくなってしまうからと、安易に市販の痛み止めに頼ることが癖になってしまっている……そんな方もいるのではないでしょうか。
しかし、自己判断での頭痛薬の使いすぎは、結果として余計に頭痛をもたらしてしまうことも。
慢性的に続く頭痛には漢方薬が利用できます。今回は、頭痛に適した漢方薬をご紹介します。
漢方薬の強みが活かせる頭痛は「慢性頭痛」
まず、頭痛であれば何でも漢方薬が使えるわけではありません。漢方薬が適している頭痛の種類は「慢性頭痛」。「頭痛もち」といわれるような、しょっちゅう繰り返し続けている頭痛です。
頭痛の中にはくも膜下出血や脳腫瘍など脳の病気で起こるものもあります。こうした病気の場合は早急な治療が必要となりますので、急に頭が痛み出した・普段とは痛み方が異なるなど、「おかしいな」と感じるときには一度病院を受診しましょう。また、たとえそうした頭痛ではなくても、まずは一度脳外科の診断を受けておくと安心ですよ。
漢方薬が適している「慢性頭痛」にも、いくつかのタイプがあります。
・片頭痛
ズキンズキンと脈を打つような痛みが発作的に起こる頭痛。
・緊張型頭痛
肩こりを伴うことが多い頭痛。頭全体が締め付けられるような痛み。
・心因性頭痛
精神的ストレスからくる頭痛。
・女性特有の頭痛
生理サイクルに伴って引き起こされる頭痛。
漢方では、慢性頭痛の原因は「気血水」の異常だと考えられています。(気=生命エネルギ-、血=血液とその働き、水=体液とその働き)
頭痛のタイプに加え、この気血水の異常の種類によって、適した漢方薬は異なります。
慢性頭痛に作用する漢方薬7選
慢性頭痛の際に用いられる漢方薬をいくつかご紹介します。
・川きゅう茶調散(せんきゅうちゃちょうさん)
寒い時にかかってしまった風邪の頭痛や鼻づまりに効果がありますが、それ以外にも特に冬の季節に冷たい風が身体にあたると悪化する頭痛や女性の方の頭痛を中心に効果があります。
川キュウ茶調散は昔から女性の常習性がある頭痛の薬として有名で、血の道症(女性特有の症状にともなって現れる精神的、身体の症状)にも適応します。また、突発性の頭痛やめまいを中心に寒気、発熱などの風邪症状にも使用する事ができる漢方薬です。
・呉茱萸湯(ごしゅゆとう)
メインとなる生薬「呉茱萸」には保温や鎮静作用があり、体を温めることによって頭痛を落ち着かせる漢方薬です。
発作的に強い痛みが襲い、酷い場合には吐き気を伴うような片頭痛によく使われます。また、うなじや肩のこりを伴う緊張型頭痛にも処方されることのある漢方薬です。
適している人は、消化器系が弱るなどして体力があまりなく、手足が冷えている人です。西洋医学の頭痛薬で胃腸が荒れやすい人でも使える薬として、多く使われている漢方薬ですが、デメリットを挙げるならば苦い薬だということでしょう。
・五苓酸(ごれいさん)
気血水のうち、「水」が滞った「水滞」が原因と思われる慢性頭痛に使われる漢方薬です。自覚症状としては、口の渇きやむくみ、のぼせなどがあります。体力が中程度ある人に向いている漢方薬です。
・葛根湯(かっこんとう)
葛根湯という名前は漢方に詳しい人ではなくても見聞きしたことがあるかもしれません。風邪の引き始めに飲む習慣があるという人もいるでしょう。
葛根湯は体を温める作用があるため、風邪や発熱時だけではなく、うなじや背中・肩がこっているときにも使われる漢方薬なのです。そのため、慢性頭痛の中でも特に「緊張型頭痛」の人に処方されます。なお、比較的体力があり、胃腸が丈夫な人に適しています。
副作用:生薬のひとつ「麻黄」には副作用があります。不眠・頻脈・動悸・血圧上昇には注意が必要です。
・釣藤散(ちょうとうさん)
体力があまりなく、冷えを抱えていない人に適している漢方薬です。主に中年以降の人の慢性頭痛に効果があるとされています。
特に朝方に起こる頭痛や、頭の重だるさ(頭重感)を抱えている人に処方されます。肩こり・うなじのこりにも作用するため、緊張方頭痛にも適している漢方薬です。
・半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)
冷え症を抱え、体力があまりない人に適している漢方薬です。特にストレス過多の人など、心因性の頭痛や頭重感だと考えられる際に処方されることが多いです。
生薬のひとつ「半夏」は、「水」の滞りを取り除いて「気」の巡りを整えるものです。また、「天麻」は痛みを取る作用を持つ生薬です。
・桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
桂枝茯苓丸は産婦人科で処方される代表的な漢方薬のひとつです。体力が中程度あり、のぼせやすいけれど足が冷えやすい人や下腹部に張りを感じる人に適しています。女性の月経由来の頭痛に効果があるとされています。
副作用:体力が低下した人が服用した場合、胃腸に悪影響が出ることがあります。
頭痛は血液の不足によっても発生する場合があります!
身体にとって血液は非常に大切な要素の1つですが、その血液の不足(血虚)によって頭痛の症状がでる場合があります。頭痛以外にもめまいやふらつき、夜なかなか寝ることができない、女性特有の症状が遅れてしまっている場合には頭痛を改善する漢方薬以外にも血液を補う漢方薬をおすすめいたします。
四物湯(しもつとう)
婦人の聖薬として当帰(とうき)を中心として血液を補う(補血薬)として使用されています。特に女性特有の症状(生理など)、産後には頭痛に対応する漢方薬と共にご使用をおすすめいたします。
頭痛薬依存からの脱却にも使用可能! 服用は医師の判断を
西洋医学の頭痛薬・鎮痛薬の常用はあまり好ましくありません。連日服用し続けることにより、かえって頭痛を引き起こす「薬物乱用頭痛」を招く可能性もあります。
漢方薬の服用に切り替えることにより、頭痛薬依存の状況から脱することも可能です。ただし、頭痛の状況や市販薬の服用状況などにより、適した漢方薬の種類や量は異なります。体に負担を与えないためにも、まずは医師の判断を仰ぐことがおすすめです。病院処方の漢方薬であれば、保険内での処方も可能ですよ。