胃がなんとなくもたれた感じが続く……。二日酔いでもなければ、嘔吐するわけでもない。原因のはっきりしない胃もたれは気力や体力が削がれるものですよね。
漢方医学では、胃腸の働きを重視しています。そのため、胃腸の働きに作用する漢方薬の種類は数多く存在しています。
その胃もたれ、病気由来ではない?
西洋医学的な検査で異常がないのにも関わらず胃もたれが続く症状のことを、「機能性ディスペプシア(胃腸症)」と呼びます。こうした慢性的な胃もたれにも漢方薬が適しています。
胃もたれ中の胃は運動機能の異常を起こしていることが多いと言われています。本来であれば、食べものを食べたときに胃が広がり、撹拌(かくはん)させて胃液と混ぜ合わせた上で次の内臓・十二指腸へ移動させるのが胃の役割となりますが、胃がうまく広がらないと、少量の食べ物でも胃がすぐに満杯になってしまいます。そうするとその後の撹拌や排出機能にも影響が出てしまい、胃もたれが起こりやすくなります。
そのため、胃の広がりに作用する漢方薬が処方される事が中心となります。
漢方薬は東洋医学の薬ですが、近年では西洋医学の研究で有用性が研究されているものもありますのでおすすめです。
胃もたれに作用する漢方薬5つ
・六君子湯(りっくんしとう)
体力があまりない人の胃腸薬として処方されることが多い漢方薬です。痩せ型で顔色が悪く、冷え症の人の胃もたれに処方されています。また、気持ち悪さの症状が継続して出てしまう方にもおすすめです。
8種類の生薬のうち、「人参」「半夏」「茯苓」「朮」「陳皮」「甘草」の6種類を6人の君子に見立てたことから「六君子湯」という名前がつけられたといわれています。
現代では西洋医学の見地から効果が研究されています。その結果、機能性ディスペプシアや胃食道逆流症の治療で重要な薬だとされるようになっています。
・人参湯(にんじんとう)
体力がなく、冷え症の人に適している漢方薬です。「人参(薬用人参)」は日本人にも古くから親しまれてきた生薬。滋養強壮、疲労解消などに良いとされています。先ほど挙げた「六君子湯」をはじめ、さまざまな漢方薬に配合されている生薬です。
そんな人参を主薬とする人参湯は、胃腸全般の不調に対する漢方薬です。胃腸が弱い人、胃がもたれる人、下痢傾向や倦怠感がある人に処方されています。また、体質が冷え気味(冷え性)の方や血液不足(血虚)を感じる方、消化器が冷えているような感じがする方は人参養栄湯(にんじんようえいとう)をおすすめします。
副作用:生薬のひとつ「甘草」の副作用で、むくみや血圧上昇が起こることがあります。また、アルドステロン症、ミオパチー(筋肉障害)、低カリウム血症のある人は使用できません。
・茯苓飲(ぶくりょういん)
吐き気や胸やけ、胃もたれ、尿の量が減少するといったことをともなう胃炎の人に処方されます。胃下垂、機能性ディスペプシアの人へ用いられることも。
・平胃散(へいいさん)
臓器の消化不良をともなう胃もたれ、胃痛、腹痛、食欲不振、下痢などに処方される漢方薬です。胃腸で消化吸収をする時に必要な熱が失われてしまって臓器が冷えている方、冷たいものをよく飲まれてしまわれる方で消化不良を感じる方、胃腸炎、機能性ディスペプシアのほか、口内炎の人へも用いられています。
・胃苓湯(いれいとう)
「平胃散(へいいさん)」と「五苓散(ごれいさん)」を合わせた漢方薬です。下痢、吐き気、胃もたれ、口の渇きのほか、おなかがグルグル鳴るような症状を訴える人に処方されています。主に吐き気がない方は平胃散(へいいさん)がおすすめです。
六君子湯のように、西洋医学の研究の結果、その効果が確かであると認められている漢方薬も存在しています。
番外編:関連するおすすめ漢方、サプリメント
・高麗人参(こうらいにんじん)
主に消化吸収で使用される臓器の調子が悪い事で発生してしまう症状(脾虚)に対して強化していくのが高麗人参です。臓器に冷えを感じたり、冷たいものをよく飲まれてしまう方は平胃散(へいいさん)と一緒にお使いいただけますのでおすすめです。また、疲れが酷く感じる方、血液不足(血虚)を感じる方は十全大補湯(じゅうぜんだいほとう)、四物湯(しもつとう)などの漢方薬と一緒に服用もおすすめです。
・芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)
足が夜間に攣る症状のある方は消化吸収する臓器を上記の漢方薬などによって改善をしながら、気と血を補うことで攣りの症状を改善する芍薬甘草湯との併用がおすすめです。人参湯(にんじんとう)や人参養栄湯(にんじんようえいとう)などとの併用もおすすめできます。